技術コラム

QDDモータとは? ロボット関節を支える「準ダイレクトドライブ」技術を解説

ロボティクス技術 QDD

執筆:山水先端技術株式会社

ヒューマノイドロボット、四足歩行ロボット、外骨格などの高性能ロボットでは、軽量化しながら大きなトルクを出力し、人や環境と安全に相互作用できる関節が求められます。こうした要件に応える駆動方式として注目されているのが、QDD(Quasi Direct Drive:準ダイレクトドライブ)モータです。

図1  QDDアクチュエータ内部構造のイメージ

ヒューマノイドロボット、四足歩行ロボット、外骨格などの高性能ロボットでは、軽量化しながら大きなトルクを出力し、人や環境と安全に相互作用できる関節が求められます。こうした要件に応える駆動方式として注目されているのが、QDD(Quasi Direct Drive:準ダイレクトドライブ)モータです。
本記事では、QDD(Quasi Direct Drive)の基本原理やDD・高減速比機構との違いを解説するとともに、CubeMarsのAK・AKE・AKHシリーズを例に、それぞれの設計思想や特徴、日本市場で期待される用途について、実務目線でわかりやすく紹介します。

1.QDDモータとは?

QDDは、モータと低減速比の減速機構を一体化し、ダイレクトドライブに近い応答性とバックドライバビリティ(外力によって出力軸を逆駆動しやすい特性)を維持しながら、実用的なトルク密度を確保する駆動方式です。QDDでは、一般に6:1~10:1程度を目安とする低減速比の減速機構が用いられ、伝達経路を短くすることで、摩擦・慣性・応答遅れを抑えます。
ロボット関節では、単に大きなトルクを出せばよいわけではありません。外力を受けた際に自然に追従できること、転倒や衝突時の衝撃を吸収しやすいこと、力制御に素早く反応できることが重要です。QDDは、これらをバランスよく実現しやすい点に特徴があります。

三つの駆動方式の違い

DDは高応答ですが、大きなトルクを得るにはモータ自体を大型化する必要があります。一方、高減速比機構は小型モータで高トルクを得られる反面、摩擦や慣性が増え、外力への追従性が低下しやすくなります。QDDは、その中間に位置する設計思想です。

図2 DD・QDD・高減速比機構の特性比較

2.QDDがロボット関節に適している理由

2-1. 高トルク密度

低減速比でも、モータ・減速機・構造部材を一体化することで、限られた体積と重量の中で大きな出力を得られます。関節部の軽量化は、上流側の関節やバッテリー負担の低減にもつながります。

2-2. 優れたバックドライバビリティ

外力を受けたときに出力軸が動きやすく、人との接触時の安全性、転倒時の衝撃吸収、力制御に基づく柔軟な動作に有利です。

2-3. 高応答性

ダイナミックな歩行、ジャンプ、姿勢制御などでは、制御指令に対する瞬時の応答が重要です。伝達経路が短く、摩擦・慣性を抑えやすいQDDは、こうした用途と相性が良好です。

2-4. 低バックラッシュと高精度

精密な遊星減速機構と高分解能エンコーダを組み合わせることで、関節角度や出力トルクを高精度に制御できます。位置制御だけでなく、トルク制御やインピーダンス制御にも適しています。

3.QDDモータの内部構造

典型的なQDDアクチュエータは、ブラシレスモータ(固定子・回転子)、低減速比の遊星減速機構、エンコーダなどで構成されます。製品構成によってはドライバーボードも一体化され、位置フィードバックとFOC(ベクトル制御)により、位置・速度・トルク制御を実現します。AKEシリーズではドライバーボードが分離されており、外部ドライバーを組み合わせて使用します。 これらを同一ハウジング内に統合することで、伝達経路を短縮し、組立誤差、配線、部品点数を削減できます。モータ出力を低減速比ギアを介して直接関節へ伝える構成が、応答性とトルク出力を両立する構造的な基盤です。

4.CubeMarsのQDD関連製品

CubeMarsは、長年にわたるBLDCモータの研究開発・製造経験を有し、AK、AKE、AKHの各シリーズを通じて、ロボット関節向けの多様な駆動ソリューションを提供しています。

4-1. AKシリーズ:一体型関節アクチュエータ

AKシリーズは、ブラシレスモータ、遊星減速機、エンコーダを一体化したロボット関節用アクチュエータです。モデルや選択仕様によりドライバーボードを搭載し、サーボ制御やMITハイブリッド制御に対応します。一部モデルにはデュアルエンコーダが搭載され、配線と組立を簡素化しながら、低バックラッシュと高い位置決め精度を実現しています。 主力モデルのAK10-9 V3.0は、定格トルク18 N·m、最大トルク53 N·mで、外骨格、四足歩行ロボット、ヒューマノイドロボット、医療用ロボットなどの用途に適しています。AK70-10、AK80シリーズなど、異なるトルク帯や減速比の製品も展開されています。

4-2. AKEシリーズ:準ダイレクトドライブモータ

モータと減速機を一体化し、ドライバーボードを分離した準ダイレクトドライブシリーズです。小型・軽量化を重視する設計や、独自の制御アルゴリズムを実装する開発チームに適しています。

代表モデルのAKE90-8 KV35は、定格トルク55 N·m、最大トルク170 N·m、最大トルク密度121.4 N·m/kg、バックラッシュ9 arcmin以下です。5段精密ギア構造により高い負荷能力と低騒音動作を両立し、改良された巻線プロセスによって銅損と発熱を抑えています。外骨格、ヒューマノイドロボット、協働ロボットなどの関節用途に適しています。

4-3. AKHシリーズ:中空軸遊星アクチュエータ

配線やセンサーケーブルを軸内部に通せる中空軸構造を採用しています。ブラシレスモータ、精密遊星ギア、デュアル高分解能エンコーダ、FOC対応ドライバーを統合し、多関節システムの配線を簡素化したい設計に適しています。なお、減速比は48:1(AKH70-48)や16:1(AKH70-16)と一般的なQDDより高めに設定されており、高減速比による高トルク出力を重視した設計です。

4-4. 三つのシリーズ比較

比較項目AKシリーズAKEシリーズ
(準ダイレクトドライブ)
AKHシリーズ
構造形式モータ+減速機+
エンコーダの一体化
(ドライバーボード
は モデル・仕様
により搭載)
モータ+減速機の
一体化、 ドライバー
ボードは分離
中空軸+モータ+
減速機+ デュアル
エンコーダの一体化
代表モデルAK10-9 V3.0 KV60AKE90-8 KV35AKH70-48 V1.0
代表パラメータ定格トルク 18 N·m
最大トルク 53 N·m
最大トルク密度
121.4 N·m/kg
定格トルク 74 N·m
最大トルク 222 N·m
減速比 48:1
中空配線
適した開発迅速な統合、
量産プロジェクト
独自制御、外骨格、
ヒューマノイド
配線と構造設計の
自由度を重視

5.日本市場でQDDモータが注目される理由

5-1. ヒューマノイド・サービスロボット開発の拡大

少子高齢化と労働力不足を背景に、介護、物流、家事、点検など、人と同じ空間で働くロボットへの期待が高まっています。軽量・高トルク・高応答性を兼ね備えたQDDは、股関節、膝関節、足首などの主要関節に適した選択肢です。

5-2. 精度・信頼性への厳しい要求

日本の大学、研究機関、装置メーカーでは、低バックラッシュ、高分解能エンコーダ、繰り返し位置決め精度、安定した制御性能が重視されます。例えば、AKE90-8 KV35ではバックラッシュ9 arcmin以下を実現しており、AK10-9やAKH70シリーズなどの一部モデルでは、入出力側のデュアルエンコーダを採用しています。これらは、日本市場で重視される位置決め精度や制御安定性に対応した設計です。

5-3. 静音・省スペース設計へのニーズ

介護施設、家庭、オフィス、研究室などでは、動作音と装置サイズが導入可否を左右します。AKEシリーズの低騒音設計、AK・AKHシリーズのコンパクトな一体構造は、人との共存環境に適しています。

5-4. 大学・研究機関での開発期間短縮

成熟したアクチュエータを採用することで、研究チームは機械設計や制御基板の開発負担を減らし、制御アルゴリズムやAI統合に注力できます。ドライバーボードを搭載したAK・AKHシリーズの対応モデルでは、CAN通信を介してサーボ制御やMITハイブリッド制御を利用できます。AKEシリーズではドライバーボードが分離されているため、通信方式や制御機能は組み合わせるドライバーの仕様によって異なります。

6.主な適用分野

適用分野代表的な関節・
用途
求められる特性
ヒューマノイド
ロボット
股関節、膝関節、
肩、肘
高トルク密度、
高応答、力制御
四足歩行ロボット脚部関節、
姿勢制御
衝撃耐性、バックドライバビリティ
外骨格・
リハビリ機器
股、膝、
足首、肘
軽量、安全性、
静音性
協働ロボットアーム関節、
手首軸
低バックラッュ、
柔軟制御
医療・サービス
ロボット
人と接触する
可動部
小型、静音、
滑らかな動作

図3 QDDモータの代表的な適用分野

7.まとめ

QDDモータは、ダイレクトドライブに近い応答性とバックドライバビリティを維持しながら、低減速比機構によって実用的なトルク密度を確保する駆動方式です。CubeMarsでは、一体型のAKシリーズ、準ダイレクトドライブ設計に特化したAKEシリーズ、中空軸構造を備えたAKHシリーズを展開しており、制御方式、配線、トルク、構造設計などの要求に応じて選定できます。

8.よくある質問(FAQ)

Q1. QDDとDDの最大の違いは何ですか?

DDはモータ軸が直接負荷を駆動します。QDDは低減速比ギアを介し、DDに近い応答性を保ちながらトルク密度を高めます。

Q2. QDDと波動歯車減速機(ハーモニックドライブ®)の違いは何ですか?

一般的なQDDは低減速比を採用し、バックドライバビリティと応答性を重視します。高減速比の波動歯車減速機は高い保持力を得やすい一方、摩擦や慣性が大きくなりやすい傾向があります。

Q3. QDDはどのようなロボットに向いていますか?

ヒューマノイド、四足歩行、外骨格、協働ロボットなど、軽量、高トルク、高応答、力制御が求められる用途に適しています。

Q4. AKシリーズとAKEシリーズはどう選べばよいですか?

迅速な立ち上げと一体型構造を重視する場合はAKシリーズ、外部ドライバーや独自制御を重視する場合はAKEシリーズが適しています。

Q5. AKHシリーズの主な利点は何ですか?

中空軸を通して電源線や信号線を配線できるため、多関節ロボットの配線を簡素化し、構造設計の自由度を高められます。

Q6. CubeMarsのアクチュエータはCAN通信に対応していますか?

CubeMarsのAK・AKHシリーズなど、ドライバーボードを搭載した対応モデルでは、CAN通信を介してサーボ制御やMITハイブリッド制御を利用できます。AKEシリーズやフレームレスモータなど、外部ドライバーを使用する製品については、対応する通信方式および制御モードは組み合わせるドライバーの仕様によって異なります。メーカーによれば、今後CAN FDやEtherCATへの対応も計画されています。

QDDモータ・ロボット関節用アクチュエータの技術相談

山水先端技術株式会社は、CubeMars日本正規代理店として、
QDDモータやロボット関節用アクチュエータの選定から、
導入・量産まで一貫してサポートしています。

CAN通信、MIT Mode、サーボ制御、各種パラメータ設定など、
導入・立上げ時の技術支援にも対応しています。

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